音楽業界のテクノロジーは急速に進化しており、パソコンを用いた楽曲制作「DTM(デスクトップミュージック)」などの普及によって、誰もがミュージシャンになれる時代になりました。音楽の専門知識がなくても、気軽に楽曲を制作できるようになったのは素晴らしいことです。
しかし、音楽業界への参入障壁が低くなったことで、その分ライバルの数が増えたというのも事実です。
良い音楽を作っていれば売れるというのは幻想であり、インターネットを駆使して戦略的にマーケティングをしなければ、ミュージシャンとして日の目を見ることはないでしょう。音楽で生計を立てたいと考えている人にとって、音楽マーケティングサービスは欠かせない存在です。
そこで今回は、海外の「linkfire(リンクファイア)」についてご紹介します。
本記事ではlinkfireでできることや利用料金、実際の使い方、他のツールとの比較などをまとめているので、ツール選びにお悩みの方は是非ご参考にしてください。
linkfireとは
linkfireは、アメリカに本社を構えApple MusicやSpotifyなどといった音楽配信先のリンクをまとめたページが作成できる音楽マーケティングサービスです。
音楽配信先のほか、プレイリストやチケット、プロフィールなどをまとめたページも作成することが可能で、作成したリンクを元にアクセス分析ができます。
ただし気を付けたいのが、ページ作成画面や公式サイトの情報が英語のみの対応となる点です。ページは日本語表記になる部分もありますが、メッセージ表示が英語だったり、トラブル時に対応できないなど問題になる可能性もあります。
linkfireの無料版と有料版でできること
linkfireには、個人向けのクリエイタープランと、レーベル向けのビジネスプランがあります。利用料金は、下記のようになっています(円は1ドル120円換算)。
無料(Ad-supported)
無料でも十分使えますがブランディングが大事なアーティストにとって、ページに広告が表示されるのはイメージダウンとなりますので、使わないほうがいいでしょう。もし無料で使う場合は、広告が掲載されてない他サービスをお勧め致します。
クリエイタープラン
- STARTER:月額10ドル(1,200円)
- PRO:月額25ドル(3,000円)
個人向けのクリエイタープランではそれぞれ7日間のフリートライアルがあり、終了後はそのまま継続するか、「Ad-supported」で無料会員として利用を続けることができます。 STERTERに「プリセーブリンク」「カスタムサブドメイン」「アーティストホームページ追加」の機能が追加されたプランがPROになります。
ビジネスプラン
- ESSENTIAL:月額50ドル(6,000円)
- ADVANCED:月額100ドル(12,000円)
- ENTERPRISE & API:(問い合わせ)
レーベル向けのビジネスプランも7日間のフリートライアルがあり、個人向けのクリエイタープランと同様です。「ENTERPRISE & API」では、追加料金を支払うことで、APIリンクの作成やアフィリエイトプログラムの利用ができます。
ビジネスプランではクリエイタープランに「SNSリンク」「特典リンク」「インサイト機能」「ドメイン管理」「広告管理」の機能が追加されています。
クリエイタープランとビジネスプランの違い
クリエイタープランは主にページ作成がメインとなり、データ分析、ファンエンゲージメント、広告にあまり重点を置いていない独立したアーティストにとって手頃なパッケージになるように設計されています。 チームプランはチームプランは、Linkfireが提供する包括的なツールを利用したい大規模なチーム、経験豊富なマーケター、およびレーベルに向いています。
linkfireでできること
配信先などをまとめたリンクの作成
linkfireの管理画面から、配信先などをまとめたリンクを作成することができます。
Apple MusicやSpotify、YouTubeや日本のLINE MusicやAWSへのリンクもまとめることができ、リスナーは自分が利用しているサービスに簡単にアクセスし、音楽を聴くことができ、SNSなどで新曲の告知をする際は、各サービスのリンクを一つずつ貼る必要がなく、linkfireのリンクだけを貼れば良いため、手間が省けて便利です。
配信先のほか、プレイリスト、ライブチケット、グッズなどのコンテンツ、プロフィールなどのリンクをまとめることができます。コンテンツやプロフィールのリンクに関しては、有料会員の方が使いやすくなっています。
アナリティクス機能
アナリティクス機能では、自分の楽曲がどこの国の都市から再生されたのかを確認することができ、スマートフォンやパソコンなど、どういったデバイスからアクセスされたのかというデータも見ることが可能です。
こういったデータは、音楽マーケティングにおいて非常に重要です。特に英語で歌っている楽曲やインストゥルメンタル、クラブミュージックなどはターゲットが世界中にいます。
自分の楽曲を最も聴いてくれている国の人に照準を合わせ、その国の言語を歌詞で用いてみたり、その国で流行している楽曲の要素を取り入れたりすることで、より多くのファンを獲得することができます。
さらに、アクセスされたデバイスの分析も重要です。例えばスマートフォンからのアクセスの方が多い場合は、YouTubeで公開するミュージックビデオを縦向きで撮影するなど、スマートフォンユーザー向けのコンテンツを充実させることで、ファンを増やすことが可能です。
ドメイン管理
有料会員限定になりますが、ドメイン管理ができます。具体的には、自分のアーティスト名を入れた独自のサブドメイン「https://アーティスト名.lnk.to〜」を取得できます。他のサービスでは「https://サービス名.com/アーティスト名〜」となります。
アーティストとしてのブランド力を上げたい場合には、有効な機能ですがリスナーはドメインを気にしないので、ビッグアーティストでもない限り必須の機能ではないように思います。お金に余裕があれば、独自のドメインを取得することも一つです。
linkfireの使い方
1.会員登録
まずはこちらで会員登録をする必要があります。
右上の「GET STARTED」をクリックして、個人で登録する場合は「Creator」を、レーベルや企業で登録する場合は「Team」を選択してください。
どちらで登録する場合も、有料プランのどれかを選び、「START TRIAL」をクリックします。
以前はこの画面で無料プランである「Ad-supported」を選択することができましたが、現在はできないようになっていますので注意してください。
ただし、どの有料プランを選んでも7日間は無料で利用することができ、7日後に自動的に料金が引き落とされることはありません。クレジットカードを登録することなく、フリートライアルを開始できるため安心です。「START TRIAL」をクリックしたら、次は個人情報を入力します。
苗字、名前、メールアドレス、アーティストネームを入力し、利用規約の同意にチェックを入れて、「CONFIRM AND CREATE ACOOUNT」をクリックします。 その後、すぐに登録したメールアドレス宛にメールが届きますので、メール内の「ACTIVATE ACCOUNT」をクリックし、パスワードを設定すれば、会員登録は完了です。もしすぐにメールが届かない場合は、入力したメールアドレスが間違っているか、メールが迷惑フォルダに入ってしまっている可能性があります。その場合は、再度よく確認してみてください。
会員登録が終われば、メールアドレスとパスワードを入力し、ログインすることができるようになります。
2.リンクの作成
会員登録後、ログインするとダッシュボードが開きます。リンクを作成するためには、右上の「Create link」という緑のボタンをクリックします。
ここでリンクのタイプを選択してください。
- Release(楽曲配信)
- Pre-release(楽曲先行配信)
- Playlist(プレイリスト)
- Tickets(ライブチケット)
- Content(グッズなどのコンテンツ)
- Bio(プロフィール)
- Reward(ファン限定コンテンツ)
の中から選びます。
次に、コンテンツへのリンクを貼り付けます。
ストリーミングサービスのアルバムへのリンクや、Webサイトへのリンクなどです。作成したリンクは「Dashboard」の下にある「Links」を押すと、一覧に表示されます。 一覧から該当するリンクをクリックすると、修正することができます。
3.プリアド・プリセーブ Linkの作成
Release Linkを作成する場合、AppleMusicやSpotifyなどの有効なリンクを貼り付けます。その後、ダッシュボードの右上にある「Create link」をクリックし、「Release」を選択して、「Continue」を押してください。
すると次のようなページに飛びます。
ここでは楽曲タイトルのカスタマイズやアートワークの変更などができます。
リンクを貼り付け、「Create link」をクリックすると、URLやコードがスキャンされ、他のサービスと一致する楽曲が表示されます。
その後、共有用のリンクを取得できるダッシュボードにリダイレクトされます。リンクの準備ができると、“Ready for Review”という表示が出るため、クリックします。 すると次のような画面に移りますので、「Service destinations」から配信するストリーミングサービスを選択します。
ある特定のストリーミングサービスだけで楽曲を配信しない設定も可能です。カスタマイズセクションでは、「Landing Page」でアートワークなどの変更ができます。
その他のリンクの作成方法に関しては、下記のリンクから確認することができます。
他のおすすめスマートリンクツール
リンク作成ツールはlinkfire以外にも数多く存在します。スマートリンク作成は、LINE MusicやAWAなどの日本産ストーミングに対応できるか、デザインやカスタマイズ性が重要なポイントになります。 こちらではリンクに特化したサービスをご紹介いたします。
TAP BIO 【海外】
TAP BIOはスマホに特化し、複数のリンクページをわけることができます。プロフィールを横にスワイプすることでリンクページを次々を見ることができます。リンクもアイコンやボタン型や正方形の画像をタイル表示にさせることができおしゃれでかっこいいリンクページを作成できます。
TAP BIOはKing Gnuの常田大希さん率いるmillenium paradeさんも使っているサービスです。気になった方は、「millenium paradeのTAP BIO」を見てみてください。
- 優れたデザイン性
- 無料
- プリアド・プリセーブなし
- レポート系なし
Link Core【日本】
LinkCoreは、日本最大手の音楽ディストリビューションサービス・TuneCoreが運営しているスマートリンクサービスですので、日本語にも対応しており安心です。日本の独立系アーティストがTuneCoreを利用しており、LINE MUSIC、AWAなどのリンクをひとまとめにしたページを運用しています。
参考ページはこちら。
- TuneCoreを使うなら無料
- 日本語
- プリアド・プリセーブなし
- レポート系あり
B・O・M【日本】
B・O・Mは株式会社CotoLabが運営するスマートリンクサービスです。レポート系のデータ分析と、カッコいいページが作れる優れたデザイン性でカラーテーマのカスタマイズもできます。レポート系を除いた無料プランもお得。
- 無料プランあり
- 日本語
- 優れたデザイン性
- プリアド・プリセーブなし
- レポート系あり(有料)
songlink【海外】
songlinkは、とっても簡単にリンクページを作ることができます。設定するのが苦手、リンクページが作れればいいという方はsonglinkがお勧めです。 曲もしくはアルバムのURLを検索すると、候補が一覧で表示され該当する箇所をクリックするだけでリンクページが作れてしまいます。LINE MUSICやAWAに標準で対応していませんが、カスタムリンクでリンクを追加することが可能です。
サンプルはこちら
- 無料プランあり
- 簡単な操作性
- プリアド・プリセーブなし
- レポート系なし
他のおすすめリリースイベントツール
新曲リリースの際にApple Musicのプリアド(Pre-Add)やSpotify(Pre-Save)といった事前保存機能があります。現在ストリーミングが主流の音楽業界で、海外では新曲発表をリリースイベントして盛大に盛り上げます。 そのイベントがストリーミングアプリへのアルゴリズムへいい影響を与え、人気のプレイリストに取り上げられたりすると、バズを生む可能性を高くします。
こちらの記事に記載されいますが、SNSにプリアド・プリセーブしてくださいと告知するだけではほとんど効果がありません。
Pre-Save/Pre-Addは目新しい機能であまり浸透していないのと、配信サイトへの登録やログインをしなくてはいけないため、アーティスト・レーベルが期待する数よりも少ない傾向にあります。 これを改善し、より多くのリスナーにPre-Save/Pre-Addをしてもらうには「キャンペーン」を行う必要があります。
引用元:MUZE BLOG
年に数回しかない新曲リリースというイベントをチャンスに変えるために、リリースイベントを最大化させるツールをご紹介します。
retach(リタッチ)【日本】
リタッチはプロモーションに特化したキャンペーンツールです。Apple Musicのプリアド、Spotifyのプリセーブはもちろんし、TwitterやLINE,Instagram,Facebook,Youtubeなど標準機能も充実しています。
リタッチはキャンペーンに特化しているため、TwitterのリツートやLINEのシェア、友だち紹介など拡散させる機能があり、リリース前日まで拡散し、リリース日に多くのプリアド・プリセーブを獲得することができます。
サンプルはこちら
- 日本語
- キャンペーンに特化したインターフェース
- プリアド・プリセーブあり
- Twitterのリツイート、LINEのシェア、友だち紹介などの機能
- 応募者の地域・SNSアカウント情報も取得可能
- レポート分析あり
- 楽曲DL・クーポンコード提供・秘密のリンク
ToneDen【海外】
ToneDenもYoutubeのチャンネル登録や一部のSNSのフォローを引き換えに、賞品をプレゼントしたりできます。スマートリンクと違って設定する項目が多くなり、システム不具合の声も多く英語が得意でない場合はかなり苦戦するかもしれません。またリスナーには英語表記のページが表示されるため参加者が集まりにくくなります。
追記:Youtubeのチャンネル登録を引き換えに、商品を提供することはYoutubeの規約違反になり現在は提供されていません。
tonedenバグってDLできない報告があったのでDLできない方DM来てくれたら渡します〜
— M!R4 (@MR4____) April 7, 2021
Anyone encountering issues with Toneden?
— Spective (@spectivednb) June 1, 2021
I contacted them and they replied "Spotify made a few changes to their API last week: https://t.co/cVZiX085oO. In doing so, it looks like they introduced a substantial bug that we have informed them about and hope will be resolved soon."
サンプルはこちら
- キャンペーンに特化したインターフェース
- プリアド・プリセーブあり
- Twitter、Twitchフォロー、友だち紹介などの機能
- レポート分析あり
- 楽曲DL・クーポンコード提供・秘密のリンク
他のおすすめレポートツール
Chartmetric【日本】
Chartmetricは、SpotifyやApple Musicなどの音楽ストリーミングサービスだけでなく、InstagramなどのSNSデータ、プレイリストなどを分析できる音楽マーケティングツールです。
25以上の音楽ストリーミングサービスとソーシャルメディアのデータソースを分析することができます。過去のデータも使用することができるため、リスナーの増え方が年単位で視覚的に分かります。
例えば一年間の中で、夏にサマーソングをリリースした時期にリスナーの増え方が顕著であれば、夏に特化したアーティストとして活動するという戦略を立てることができます。また、プラットフォームごとのファン層を分析することも可能です。
例えばInstagramやTikTokには10代のファンが多いということが分かれば、10代が好むような楽曲を作り、アプローチしていきます。性別まで分析することができるため、女性のファンの方が多ければ、恋愛ソングを多く作るなどといった戦略も有効です。
Chartmetricを使えば、音楽ストリーミングサービスとSNSを同時に分析し、具体的な戦略を立てることができます。
linkfireと他のサービスの比較
linkfire以外にも多くの音楽マーケティングツールが存在することをご説明いたしました。その中でニーズの高い重要な3つの項目「スマートリンク」「リリースイベント」「レポート分析」の3項目に分けて比較いたしました。 その中で各項目ごとにおすすめするツールを提案いたします。
スマートリンク作成のおすすめ
もしディストリビューションでTuneCoreを既にお使いであれば、ほとんどの機能が備わっている「LinkCore」をお勧めいたします。
日本産のストリーミングサービスのLINE MusicやAWAなどのリンクに対応していることは必須だとすると、「B・O・M」か「linkfire」になりますが、日本語で無料でリンクが作成でき、サブドメインやレポート分析でも安い「B・O・M」をお勧めいたします。
もし英語がわかり海外市場へのリンクを作成する場合は、「linkfire」「TAP BIO」「songlink」が選択肢になります。
リリースイベントのおすすめ
アーティストにとって新しい楽曲のリリースは最大のイベントです。そのイベントを最大限にもりあげ多くのプリアド・プリセーブを獲得できる機能が多くあることが重要になります。
その条件を一番満たしている「retach(リタッチ)」をお勧めいたします。「retach」は日本初プリアド・プリセーブキャンペーンに対応したツールで、拡散される機能にTwitterのリツイートやいいね、LINEでシェア、友だち紹介などを賞品と引き換えに求めることがで拡散力を拡大させます。
「ToneDen」や「linkfire」より選択できる応募条件が多く、応募者管理から自動抽選・当選連絡まで一括管理でき、応募ページが日本語表示であることも大きなメリットです。もし海外市場にむけたキャンペーンを作成する場合は、応募ページが英語の「ToneDen」をおすすめいたします。
レポート分析のおすすめ
音楽リスナーのレポート分析についてですが、英語のみの提供ですが、「B・O・M」「linkfire」とは圧倒的に機能面で差があるため、「Chartmetric」をお勧めいたします。
よくあるマーケティングの悩みとしては分析データを見ても、次に何をしていいかわからない。という悩みを皆さんお持ちです。「Chartmetric」は新規リスナーの開拓や、狙い目のプレイリストの提案からコラボレーションの提案まで行ってくれる素晴らしいツールです。
まとめ
linkfireは海外では多く使われていますが、1つ1つの機能と役割にわけて選ぶと日本市場ではあまりいい選択肢ではないように思います。
音楽マーケティングとして
- 「LinkCore」か「B・O・M」をつかって無料でスマートリンクページ作成して、SNSなどのプロフィールに常にURLを張ってどこからでも流入させれるようにしておく。
- 新曲リリースを「retach」でイベント化して盛大に盛り上げ、認知拡大、ファン拡大、大量プリアド・プリセーブを獲得する
- 2のエンゲージメントがストリームアプリのアルゴリズムに反応に、人気プレイリストやキュレーターやに選ばれたりする可能性を最大化し成功するチャンスをつくる。
- 1~3で得た情報を「Chartmetric」で分析確認し、戦略提供をもとに次の一手を考えアクションする。
といった流れを繰り返していくことが現在の音楽マーケティングにとって重要なことだと思います。この記事がアーティストの方の参考になれば幸いです。